雑草共存環境におけるコシヒカリ有機栽培に必要な栽植密度

タイトル 水稲一般栽培における栽植密度については多くの知見が集積されていますが、当県の有機栽培で検討されたことはありません。また検討の結果、栽植密度の調整が非常に重要であることがわかりましたので、その成果を紹介します。
目標:省力的な有機栽培技術1 有機栽培では雑草対策が問題となりやすいため、様々な抑草・除草技術の開発が進められています。
しかし、雑草の根絶を目指すことは労力的・経済的負担が甚大となるため推奨できません。
過剰な除草労力を投下せず、ある程度の雑草を許容しながら水稲の生育を優勢に維持することが合理的といえます。
そのために必要となる肥培管理・雑草管理・育苗技術について成果情報として紹介してきましたが、ここでは移植技術のうち栽植密度について取り上げました。
目標:省力的な有機栽培技術2 水稲と雑草は水田の中で陣取り合戦を繰り広げることになります。
その際、雑草を全滅させる必要はなく、水稲が大部分を占めれば勝ちといえるでしょう。
そのためにはできるだけ大きな苗を密に移植することが、水稲にとって有利になるはずです。
また、移植の時期をなるべく遅くする (5/末-6/初) することで雑草の生育できる期間を短くすることも有効です。
幼穂形成期頃の残草状況の目安1 幼穂形成期頃の残草状況の目安です。この程度の残草であれば許容可能です。
幼穂形成期頃の残草状況の目安2 幼穂形成期頃の残草状況の目安です。
栽培概要と実験処理 実験処理の状況 (赤字部分) です。
田植機の設定 栽植密度を高くするためには、育苗箱数が多く必要になります。

成苗の植付本数が中苗に比べて少ないのは、播種量の違いによります。
[成苗] 播種量 80g (乾籾)/箱 → 苗2500本/箱 → 3.6本/株
[中苗] 播種量 100g (乾籾)/箱 → 苗3500本/箱 → 4.5本/株
(千籾重28g、苗立率90%として概算)
育苗費用の見込みと効果 例えば、栽植密度を45株/坪から60株/坪に変更した場合、10aに必要な苗箱数は7箱増加、それに伴って経費は3500円高くなります。
その結果、収量が10kg/10a増えれば元が取れ、それ以上増収すれば収益の増加に寄与すると見込まれます。
水稲移植 (5/28) 後の茎数推移 収量480kg/10aのためには、穂数は300本以上必要です。
栽植密度を高めると、茎数が増え、雑草共存環境においても十分な穂数を得ることができます。
雑草共存環境では、栽植密度が低いと穂数不足に陥りやすいことがわかります。
栽植密度を変え場合の生育差 栽培管理は同一ですが、栽植密度を変えるとこれだけ生育差が生じます。
穂肥前日 (7/20) における水稲と雑草の乾物重 苗種と栽植密度が水稲と雑草の乾物重におよぼす影響をみたものですが、成苗でも中苗でも栽植密度が高いほど水稲の乾物重が増加し、雑草の乾物重が減少していることがわかります。
一定面積の陣取り合戦と考えた場合、最初の段階で移植苗の数量が多いほど有利に展開できることが確認できます。
穂肥前日 (7/20) における水稲と雑草の窒素分配 同様のことが窒素の吸収量の分析においても確認できます。
栽植密度が高いほど、水稲への窒素配分割合が高くなっています。
収量と倒伏程度 栽植密度を高くした場合、水稲優勢の生育となるため、その効果は収量にもおよびます。
この試験例では坪刈り収量で480kg/10a以上となりました。
栽植密度を高めることにより水稲優勢の生育となるため、稲体が全体的に大きくなり、倒伏程度も大きくはなりますが、異常な徒長によるものではありません。
栽植密度向上に伴う費用対効果 本事例では、栽植密度を45株/坪から60株/坪に変更した場合、100kgの増収効果が認められましたので、3500円の投資で35000円の収益を得られると概算でき、費用対効果は10倍といえます。
雑草残草量が少ない条件では栽植密度による収量差はほとんどない この試験例は、雑草発生量の少ない水田で除草作業の有無や栽植密度の違いによる影響をみたものです。
留意点として、もともと雑草発生量の少ない条件では、従来の一般栽培における栽植密度の見解と同様で、栽植密度を高めても増収効果は認められません。
病害虫被害や精玄米品質への影響は認められない1 栽植密度と病害虫被害の発生程度については、試験栽培の範囲においては差異はありませんでした。
風通しの善し悪しと病害虫の発生程度に関係性があると仮定した場合も、その事が問題になるのは移植時ではなく、7月頃ですし、風は水稲だけでなく雑草によっても遮られることを考えると栽植密度による影響は小さいと推察しています。
病害虫被害や精玄米品質への影響は認められない2 栽植密度を高めることにより玄米タンパク含量もやや増加傾向となりましたが、 いずれの場合も適度な範囲にありました。
増加傾向となった理由は、栽植密度が高いほど、水稲への窒素配分割合が高くなったためと推察しています。

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