コシヒカリの高温登熟下における品質向上のための水管理  栽培科高品質栽培

タイトル コシヒカリの高温登熟下における品質向上のための水管理について紹介します。
背景・ねらい 近年、稲登熟期における高温被害の一つとして白未熟粒の多発が問題になっている中で、その発生機構の解明と技術的対策が急務となっています。
白未熟粒の発生は、高温登熟下での蒸散量の低下による稲体への水分及び養分供給量の低下が一因と推測され、出穂期以降の適正な水管理の励行が品質低下の抑制に有効であると考えられます。
そこで、コシヒカリの品質の安定化を図るため、高温下での水管理方法の違いが、根の活力や品質に及ぼす影響について調べました。
方法 試験方法について、平成24年度及び25年度に新潟県農業総合研究所作物研究センター(長岡市)の水田圃場(埴壌土)にて品種コシヒカリを用い、試験を行いました。
試験区の構成については、出穂後0日〜25日での水管理として、常時水深4〜5cmに維持した湛水、pF1.0未満の飽水、pF1.0〜1.5の乾燥気味の水管理を、
高温処理として、出穂前10日から出穂後25日まで、オープントップチャンバー法による加温を行った区と行わなかった区を設定しました。
オープントップチャンバーについては、写真のように、試験区内に影ができない1面部分だけ黒マルチをかけ、集熱性を上げたことで自然状態と比べて最高気温で約2℃の加温効果がみられました。
水分含有率のめやす ちなみに、飽水管理の土壌水分含有率pF1.0未満の見た目のめやすは、平成21年度に活用技術として報告されており、「田面に水はないが、足跡の底に水がたまっている箇所が散見される状態」というのがめやすとなります。
また、乾燥気味の水管理としたpF1.5程度の見た目のめやすは、「田面にひびが入り始める状態」になります。
出穂後の水管理法の違いによる品質への影響 では、出穂後の水管理法の違いによる品質への影響についての結果を示します。
湛水管理の整粒歩合は、自然状態において飽水管理との明瞭な違いは見られませんが、高温処理によって大きく低下しました。
この低下は、基部未熟粒の増加が大きな要因となっています。
乾燥気味の管理では、高温処理の有無に関わらず整粒歩合が低下し、乳白粒及び基部未熟粒の発生が高まる傾向がみられました。
以上のことから、高温登熟下において、出穂期から出穂期25日後までの水管理は平均土壌水分がpF1.0未満の飽水管理を行うことで、白未熟粒の発生を抑制し、整粒歩合を高められることが分かりました。
出穂後の水管理法の違いによる地温への影響1 水管理によって高温による品質への影響に違いがでた原因を探るため、まず地温への影響を調べました。
品質が低下した乾燥気味の水管理は、飽水(pF1.0未満)と比べ、日中の地温が高まる傾向が見られました。
これは、水分が少ない分、土壌が温まりやすいが冷めやすいことが影響したものと考えられます。
出穂後の水管理法の違いによる地温への影響2 また、高温下で品質が低下した湛水管理は、正午頃から朝方頃までの地温が高まる傾向が見られました。
これは、水分が多いことで、土壌が温まりにくいが冷めにくくなったことが影響したと考えられます。
以上のことから、飽水管理は他の水管理と比べて日中及び夜間の地温の上昇を抑えることが分かりました。
出穂後の水管理法の違いによる根の活力への影響 地温が水管理による影響をうけることが示されたことから、それが稲体に及ぼす影響を調べるため、根量を調べました。
根量は、円筒モノリス法により株間の根群を地下30cmまで採取しました。
その結果、湛水管理では、高温によって根量が大きく低下し、乾燥気味の水管理は高温処理の有無に関わらず、根量が少ないことが示されました。
したがって、根の発達のめやすとなる根量は、高温下では飽水管理により低下が抑えられることが分かりました。
出穂後の水管理法の違いによる同化産物合成能への影響 水管理の違いによる稲体への水分供給量の低下は、光合成能力の低下にもつながるため、比葉重(葉面積当たりの葉の乾物重)を調べ、これを検証しました。
その結果、湛水管理では、高温によって比葉重が低下しやすく、乾燥気味の水管理は高温処理の有無に関わらず比葉重が低いことが示されました。
したがって、比葉重は高温下では飽水管理により低下が抑えられることが分かりました。
まとめ1 以上、まとめると、高温登熟下での湛水管理及び乾燥気味の水管理(pF1.0以上)は、地温が高まりやすいことから、根の発達や活力を低下させ、水分の供給能力を低下させると考えられます。
また、水分の供給能力の低下は、光合成能力の低下につながり、同化産物の合成量および供給量の低下を引き起こすと考えられます。
これら、水分および養分の供給が湛水管理及び乾燥気味の水管理(pF1.0以上)により抑制されることが、品質の低下につながったと考えられました。
要約 本研究を要約すると、高温登熟下での湛水管理及び乾燥気味の水管理(田面にひびが入り始める状態を上限)は、根及び葉の発達や生理活性を抑制し、品質が低下するため、飽水管理(田面に水はないが、足跡の底に水がたまっている箇所が散見される状態)により品質向上を図ることができると考えられます。
導入効果・留意点 本成果の導入効果は、高温条件下でのコシヒカリの適正な水管理方法の参考となります。
留意点として、
1 平成25年から26年に作物研究センターほ場(細粒質グライ土)において有機入り肥料を用いて得られたデータです。
2 高温処理は出穂期10日前から25日後までオープントップチャンバー法により行い、慣行と比べ最高気温で約1.7℃上昇しました。
3 pFメータは土中10cmの深さに挿入し、計測しました。
4 pF値のめやすは、平成21年度活用技術「高品質米生産のためのコシヒカリ登熟期の目安」を参考にしてください。
5 田面にひびが入り始める状態は、pF1.5を上限に灌水を行いました。

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