底泥や下層土の利用に向けた生育障害の発生回避方法

[要約] 

  暗色系の底泥や下層土をほ場に利用する場合には、可給態窒素を測定して過剰生育に留意する。また、過酸化水素で酸化処理してpHを測定し、酸性硫酸塩土壌か否かを判断する。これにより未然に生育障害の発生を回避できる。

[背景・ねらい]

  農地造成、基盤整備に限らず河川や道路の工事にともなって発生する土壌は、ほ場の均平化や排水不良のほ場の盤上げなどに利用されている。建設規模の拡大、機械の大型化によって、浚渫された河川、湖沼、ダム底などの底泥や、道水路・トンネル工事によって掘削された下層土を利用するケースが増え、作物に生育障害を起こす事例が増えている。そこで、事前にほ場に利用する土壌の診断を行い、未然に生育障害の発生を回避する。

[成果の内容・特徴]

  1. 河川や湖沼、ダム底などの底泥は腐植含量が多いため非常に肥沃で、土色は暗褐〜黒色である。可給態窒素が高い底泥をほ場に客土すると、水稲に過繁茂、早期の倒伏による著しい収量減及び品質低下等の生育過剰障害が発生する(表1)。
  2. 酸性硫酸塩土壌は多量の硫化物を含むため暗灰〜暗青灰色である。海岸線に近い排水の悪い低地の下層土や底泥だけでなく、かつて海底であった土壌が地表に現れた台地にも存在する。掘り出されたばかりの土壌では既存の土壌分析値(pH(H2O)、pH(KCl)、置換酸度)からは判断できない(表2)。
  3. 酸性硫酸塩土壌は過酸化水素を用いて酸化すると、含有される硫化物が硫酸イオンとなり、極端にpHが低下する(表2、図)。その結果、すなわちpH(H2O2)がpH(H2O)よりも極端に低い場合にはほ場への利用を取り止める。
  4. 以上、暗色系の底泥や下層土をほ場に利用すると生育障害を起こす危険性がある。肥沃度を把握するために可給態窒素を測定して生育が過剰にならないように留意する。また、過酸化水素で酸化処理してpHを測定し、酸性硫酸塩土壌であるか否かを診断する。これにより未然に生育障害の発生を回避できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 「農耕地土壌分類・第3次改訂版(1995)」ではpH(H2O2)3.0未満で「硫酸酸性質」の土壌区分に分類される。また、アメリカの土壌分類体系Soil Taxonomyにおいては可酸化性硫黄を7.5g/kg以上含む土壌が酸性硫酸塩土壌とされている。
  2. 客土母材については県営ほ場整備調査事業において可給態窒素の測定を行っており、酸性硫酸塩土壌の分析診断も導入の予定である。

[具体的データ]

 表1 生育過剰が発生したほ場に搬入された底泥の可給態窒素(例)
 表2 生育障害が発生したほ場に搬入された酸性硫酸塩土壌の分析値(例)

 図 酸性硫酸塩土壌の判別法 (「土壌環境分析法」を一部改変した。)

[その他]

研究課題名:県営ほ場整備調査事業
予算区分:委託
研究期間:平成13年度
発表論文等:農地部県営ほ場整備調査事業報告書
         「農地情報」第71号(平成15年2月12日発行)
農業総合研究所 基盤研究部 連絡先 TEL 0258(35)0047
FAX 0258(35)0021